出題箇所: 学科III(構造)No.3〜No.6 付近
出題数: 1〜2問程度
・基礎は「建物の荷重を地盤へ安全に伝える」ための構造要素です。基礎の形式(直接基礎・杭基礎)と、それぞれが荷重をどのように地盤に伝えるか(支持機構)の違いをまず整理しましょう。
・「直接基礎」は基礎底面で地盤を直接押さえて支える形式で、独立基礎・布基礎・べた基礎の3種類があります。それぞれの形状・適用条件・長所短所の組み合わせが頻繁に問われます。
・「杭基礎」は支持層まで杭を打ち込む支持杭と、杭側面の摩擦力で支える摩擦杭に大別されます。杭の材料(木杭・コンクリート杭・鋼管杭)や施工方法(打ち込み杭・場所打ち杭)による使い分けも要確認です。
近年の出題傾向
- べた基礎と布基礎の比較は最頻出です。べた基礎は底面積が大きく荷重分散に優れる反面、コンクリート量が多くコストが高い。布基礎は壁下に連続して設ける形式で、木造住宅に広く採用されています。「どちらが軟弱地盤に有利か」という問いにはべた基礎が正解です。
- 杭の「負の摩擦力(ネガティブフリクション)」は要注意ポイントです。周囲の地盤が沈下するとき、地盤が杭を下向きに引きずる力が働き、これが杭に追加の圧縮力として作用して杭や基礎に悪影響を与えます。
- 「基礎の根入れ深さ」に関する規定(凍結深度・地盤の種別)と、偏心荷重・不同沈下への対応策(地中梁・基礎スラブの一体化)も近年よく問われます。
模擬問題と解説
1. 直接基礎の形式と適用条件
【問題】建築物の直接基礎の形式及びその構造特性に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 「べた基礎」は建物の底面全体を鉄筋コンクリートのスラブで一体化する形式であり、荷重を広い面積で地盤へ分散できるため、地盤の支持力が比較的低い軟弱地盤において布基礎よりも有利とされる。
- 「布基礎」は壁の直下に連続して設ける逆T字形断面の基礎であり、木造住宅に広く用いられるが、軟弱地盤では底面積が小さく荷重を均等に分散しにくいため、不同沈下が生じやすい場合がある。
- 「独立基礎(フーチング基礎)」は柱の直下ごとに独立したフーチングを設ける形式であり、各フーチングを地中梁で相互に緊結することで、基礎間の相対変位を抑制し不同沈下への抵抗性を高めることができる。
- べた基礎は底面全体で荷重を支えるため、独立基礎や布基礎と比べて単位面積あたりの地盤への接地圧が大きくなり、支持力が十分な良好地盤にのみ適用できる基礎形式である。
- 直接基礎の底面(基礎底)は、冬季に地盤が凍結・膨張することによる基礎の押し上げを防ぐため、その地方の凍結深度よりも深い位置に設けなければならない。
【正解】4
- 解説:べた基礎の説明が真逆になっています。べた基礎は建物底面「全体」でコンクリートスラブが広がるため、同じ荷重をより広い面積で受けることができます。つまり単位面積あたりの接地圧は独立基礎や布基礎より「小さく」なります。接地圧が小さいほど軟弱地盤でも支持できるため、べた基礎は支持力の低い軟弱地盤にこそ有利な形式です。「接地圧が大きく、良好地盤にのみ適用できる」という記述は正反対であり、不適当です。
- ポイント:
べた基礎 → 接地圧が小さい → 軟弱地盤に有利
独立基礎 → 接地圧が大きい → 支持力十分な良好地盤に適用
布基礎 → 壁下連続・木造住宅向け・軟弱地盤では不同沈下リスクあり
地中梁 → 独立基礎同士を繋ぎ不同沈下を抑制する重要部材
2. 杭基礎の種類と負の摩擦力
【問題】杭基礎の設計及び構造特性に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 「支持杭」は、杭先端を堅固な支持層(岩盤・硬い砂礫層など)に到達させ、主に杭先端の支圧力によって建物荷重を支持層へ伝える形式であり、先端支持力が支持力の大部分を占める。
- 「摩擦杭」は、支持層まで到達させることなく、杭の側面と周囲地盤との間に働く周面摩擦力によって建物荷重を支持する形式であり、深部に支持層がない軟弱地盤でも適用される場合がある。
- 杭基礎に発生する「負の摩擦力(ネガティブフリクション)」とは、杭周囲の地盤が杭よりも速く沈下するとき、地盤が杭の側面を上向きに引っ張る力であり、この力は杭の引張力として作用するため、杭の引き抜き耐力に余裕をもたせた設計が必要である。
- 「場所打ちコンクリート杭」は、現地で掘削した孔の中に鉄筋かごを建て込んでコンクリートを打設する形式であり、大口径の杭を製作できるため大きな支持力が得られるが、施工管理(孔壁崩壊・泥水処理・コンクリートの品質)が重要となる。
- 既製コンクリート杭を打ち込み工法で施工する場合、打撃時の振動・騒音が周辺環境に影響を与えることがあるため、市街地や住宅密集地では埋め込み工法(プレボーリング工法等)が採用される場合が多い。
【正解】3
- 解説:負の摩擦力(ネガティブフリクション)の方向と作用効果が完全に誤っています。杭周囲の地盤が沈下するとき、地盤は杭の側面を「下向き」に引きずります(地盤が下がろうとして杭を道連れにしようとする)。この力は杭を下方向に引っ張るため、杭には「追加の圧縮力」として作用します。「引張力として作用する」「引き抜き耐力を確認する」という記述は方向が逆であり不適当です。負の摩擦力は杭の圧縮耐力・沈下量の検討で考慮すべき下向きの力です。
- ポイント:
負の摩擦力(ネガティブフリクション) → 地盤が杭を「下向き」に引きずる力
杭への影響 → 追加の「圧縮力」として作用(引張ではない)
発生条件 → 杭周囲の軟弱地盤が圧密沈下するとき・盛土荷重時など
対策 → 杭の表面に防護コーティング(ビチューメン等)を施す、摩擦を低減する
3. 基礎の根入れ深さと地中梁
【問題】建築物の基礎の根入れ深さ及び地中梁に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 基礎の根入れ深さは、その地方における最大凍結深度よりも深くしなければならず、これは冬季に地盤が凍結・膨張(凍上)することで基礎が押し上げられ、建物に損傷を与えることを防ぐためである。
- 鉄筋コンクリート造の独立基礎(フーチング基礎)においては、隣接する基礎間を「地中梁」で剛に繋ぐことにより、地震時の水平力による基礎の水平変位を拘束し、また不同沈下に対する抵抗性を向上させることができる。
- 建築基準法施行令において、構造耐力上主要な部分である基礎は、建物の自重・積載荷重・地震力等に対して安全な構造としなければならず、その設計にあたっては地盤調査の結果に基づいた地盤の許容応力度を用いる。
- 地中梁は、主に基礎フーチング間の曲げモーメントを伝達するために設ける部材であり、地震時の水平力に対しては有効に機能しないため、水平力抵抗は基礎フーチング単体の剛性に依存させる設計とした。
- 傾斜地や段差のある敷地に建物を計画する場合、基礎底面の高さに差が生じると隣接する基礎間での地盤の支持力が不均一になりやすいため、できる限り基礎底面を同一レベルに揃えるか、段差部分に十分な補強を行うことが重要である。
【正解】 3
- 解説:地中梁の役割についての説明が誤っています。地中梁は基礎フーチング同士を剛に繋ぐ梁であり、「曲げモーメントの伝達」だけでなく、地震時の水平力(せん断力)の伝達にも非常に重要な役割を果たします。地震時には基礎全体が一体となって水平力に抵抗することが求められるため、地中梁は水平剛性の確保・各基礎間の相対変位防止・不同沈下の抑制など多くの機能を担います。「水平力に対して有効に機能しない」という記述は誤りであり、不適当です。
- ポイント:
地中梁の役割 → 水平力の伝達・基礎間変位の拘束・不同沈下の抑制(多機能)
根入れ深さ → 凍結深度より深く設ける(凍上による押し上げ防止)
傾斜地の基礎 → 基礎底面はできる限り同一レベルに統一する
地盤の許容応力度 → 地盤調査結果に基づいて設定・設計に用いる
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