出題箇所: 学科II(建築計画)No.1〜No.5 付近
出題数: 1〜2問程度
・温熱環境は「人が感じる暑さ・寒さ(温熱感覚)」と「建物の熱の出入り(伝熱・断熱)」の2つの視点で整理しましょう。前者は人体の快適性指標、後者は壁・窓を通じた熱移動の仕組みが問われます。
・人体の温熱感覚に影響する要素は「気温・湿度・気流(風速)・周囲の壁や窓の表面温度(放射)」の4つです。これらを組み合わせた指標(作用温度・有効温度など)の特徴と、何を考慮しているかという組み合わせが頻出です。
・熱の伝わり方には「伝導(材料内部を伝わる)」「対流(空気の流れによる)」「放射(電磁波として直接伝わる)」の3種類があり、それぞれの特性と建築への影響を区別しておく必要があります。
近年の出題傾向
- 「熱伝導率」と「熱伝達率」、「熱貫流率(U値)」の違いを問う問題が頻出です。熱伝導率は材料そのものの性質、熱伝達率は材料表面と空気の間のやりとり、熱貫流率は壁全体を通した熱の伝わりやすさという階層関係を理解しておきましょう。
- 「結露」のメカニズムは超頻出です。空気が冷やされて露点温度以下になると、空気中に含みきれなくなった水蒸気が水滴となって発生します。表面結露と内部結露の違い、防湿層の設置位置(高温側に設けるのが基本)が問われます。
- 断熱の方式である「外断熱」と「内断熱」の違いと、それぞれのメリット・デメリット(熱橋の発生しやすさ、構造躯体の蓄熱利用、改修のしやすさなど)の組み合わせも近年の重要テーマです。
模擬問題と解説
1. 温熱感覚と熱の伝わり方
【問題】人体の温熱感覚及び熱の伝わり方に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 人体の温熱感覚に影響を与える要素には、気温、湿度、気流(風速)、周囲の壁や窓等の表面からの放射(周囲の表面温度)の4つがあり、これらを総合的に評価する指標として「作用温度(OT)」などが用いられる。
- 「熱伝導」とは、物体内部において温度の高い部分から低い部分へ熱が伝わる現象であり、材料の熱伝導率が大きいほど熱を通しやすく、一般的に金属は熱伝導率が大きく、空気を多く含む断熱材は熱伝導率が小さい。
- 「放射(熱放射)」による熱の移動は、必ず空気等の媒体を介して伝わる現象であり、媒体が存在しない真空中では放射による熱の移動は発生しない。
- 冬期において、窓際で感じる「ひんやりとした感覚」は、窓ガラスの表面温度が室内の壁面等よりも低くなることで、人体から窓ガラスへの放射熱損失が増加するために生じる場合がある。
- 「対流」は、流体(空気や水)の移動によって熱が運ばれる現象であり、暖房された室内では、暖められた空気が上昇し、冷えた空気が下降することで自然対流が生じ、室内の上下で温度差が生じやすい。
【正解】3
- 解説:放射による熱移動の性質が誤っています。放射(熱放射)は電磁波(赤外線等)として熱エネルギーが直接空間を伝わる現象であり、伝導や対流とは異なり「媒体(空気など)を必要としない」ことが最大の特徴です。そのため、空気の存在しない真空中であっても放射による熱の移動は発生します(太陽から地球への熱の伝わり方が代表例です)。「媒体を介して伝わる」「真空中では発生しない」という記述は放射の本質的な性質を逆に説明しており、不適当です。
- ポイント:
伝導 → 物体内部・温度差により高温側から低温側へ
対流 → 流体(空気・水)の移動によって熱が運ばれる
放射 → 電磁波として伝わる・媒体不要・真空中でも発生する
窓際の冷え → 窓表面への放射熱損失が原因(コールドドラフトとも関連)
2. 熱貫流率・断熱と結露
【問題】建築物の断熱及び結露に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 「熱貫流率(U値)」は、壁体等を挟んで温度差のある室内外の空気間で、単位面積・単位時間あたりにどれだけの熱量が伝わるかを示す値であり、この値が小さいほど断熱性能が高いことを示す。
- 「表面結露」を防止するためには、室内側の壁表面温度をできるだけ低く保ち、室内空気の露点温度よりも常に表面温度が低くなるようにする必要がある。
- 「内部結露」は、壁体の内部において水蒸気を含んだ空気が冷やされて露点温度以下になることで発生する結露であり、断熱材の室内側に防湿層を設けることで、水蒸気が断熱材内部へ侵入することを防ぎ、内部結露の発生を抑制できる。
- 「外断熱」は、構造躯体の外側に断熱材を設ける方式であり、躯体全体を断熱材で包み込むことができるため、熱橋(ヒートブリッジ)が生じにくく、躯体の蓄熱性を室内側で利用しやすいという特徴がある。
- 「内断熱」は、構造躯体の室内側に断熱材を設ける方式であり、外断熱と比較して、室内の温度変化に対する応答が速く、間欠的に冷暖房を行う部屋に適している場合がある。
【正解】2
- 解説:表面結露の防止策が完全に逆になっています。表面結露は、壁などの表面温度が室内空気の露点温度よりも「低くなる」ことで、空気中の水蒸気がその表面で水滴となって発生する現象です。したがって、表面結露を防ぐためには、断熱性能を高めるなどして「室内側の壁表面温度を露点温度よりも高く保つ」ことが必要です。「表面温度をできるだけ低く保つ」という記述は、むしろ結露を発生させやすくする方向の説明であり、不適当です。
- ポイント:
表面結露の防止 →「表面温度を露点温度より高く保つ」(断熱強化・暖房等)
内部結露の防止 →「防湿層を断熱材より高温側(一般に室内側)に設置」
外断熱 → 熱橋が少なく、躯体の蓄熱を利用しやすい(連続運転向き)
内断熱 → 立ち上がりが速い(間欠運転向き)、熱橋が生じやすいを低減する
3. 日射・遮熱と省エネルギー計画
【問題】建築物の日射遮蔽及び温熱環境に関する省エネルギー計画についての記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 夏期の日射による室内の温度上昇を防ぐためには、ガラス面に到達する前に日射を遮る「外付けブラインド」や「庇(ひさし)」等の外部遮熱手法が、室内側に設けるカーテン等の内部遮熱手法よりも効果的である場合が多い。
- 南面の窓に設ける庇(ひさし)は、夏期に太陽高度が高い時間帯の直射日光を遮りつつ、冬期に太陽高度が低い時間帯の日射を室内に取り込みやすくする効果が期待できる。
- 複層ガラス(ペアガラス)は、2枚のガラスの間に空気層や中空層を設けることで、単板ガラスと比較して熱の伝わりにくさ(断熱性)が向上するとともに、表面結露の防止にも効果がある。
- 建物の「熱容量」が大きい構造(鉄筋コンクリート造等)では、外気温の変動に対して室温の変動が小さく追従しやすいため、間欠的な冷暖房運転を行う建物において、立ち上がり時間が短く、急速な温度調整に適している。
- 建物の気密性を高めることは、すき間風の侵入を減らし冷暖房効率を向上させる効果があるが、同時に室内の換気が不足しやすくなるため、計画的な換気設備の設置が必要となる。
【正解】 4
- 解説:熱容量が大きい構造の特性が誤っています。熱容量が大きい鉄筋コンクリート造などは、外気温が変動しても躯体に蓄えられた熱の影響で室温がゆっくりと変化するため、室温の変動は小さくなりますが、その分「室温が外気温の変化に追従しにくく、応答が遅い」という特徴があります。これは連続運転(一日中冷暖房をつけ続ける)には適していますが、「間欠運転」で短時間で部屋を暖めたい・冷やしたい場合には、温まるまでに時間がかかり不利です。「立ち上がりが短く間欠運転に適する」という記述は熱容量が小さい木造・軽量構造の特徴であり、逆の説明になっているため不適当です。
- ポイント:
熱容量が大きい(RC造等) → 室温変動が小さい・応答が遅い → 連続運転向き
熱容量が小さい(木造等) → 室温変動が大きい・応答が速い → 間欠運転向き
庇(ひさし) → 夏の高い太陽を遮り、冬の低い太陽は取り込む(パッシブデザインの基本)
遮熱は「外側」で行う方が室内に熱を入れず効果的
コメント