出題箇所:例年、学科III(構造)の No.5 〜 No.8 付近
出題数:1〜2問程度(軸組工法と連動して必ず出題される)
・地震や風などの水平力(横揺れ)に抵抗する「耐力壁」には、木材を斜めに渡す「筋かい」と、柱や梁に直接打ち付ける「構造用合板(面材)」の2つの手法があることを理解しておきましょう。
・耐力壁の強さを表す基準となる「壁倍率(1.0〜5.0)」は、設置する部材の寸法や釘のピッチによって細かく規定されており、構造計算の基礎数値となるため正確な暗記が必要です。
近年の出題傾向
- 平面的な「ねじれ」による建物の倒壊を防ぐため、耐力壁の配置は建物の中心(重心)と強さの中心(剛心)を極力近づけ、「偏心率(0.15以下)」を小さく抑える実務的な計算基準が頻出しています。
- 1つの軸組(同じ柱の間)に、筋かいと構造用合板を「ダブル(両面・併用)」で施工する場合、それぞれの壁倍率を単純に足し算(加算)して設計上の壁倍率としてよいか、その上限値(最大5.0)を問うパターンが狙われやすいです。
- 開口部(窓やドア)を設ける壁面において、耐力壁として有効にカウントできる「壁の長さ(有効長さ600mm以上)」の寸法制限や、上下階で壁の位置を一致させる「直下率」の概念が重視されています。
模擬問題と解説
1. 壁倍率の算定と加算の制限
【問題】木造建築物の構造設計における耐力壁の壁倍率に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 厚さ30mm、幅90mmの木材の筋かい(片筋かい)を配置した軸組の壁倍率は、建築基準法施行令の規定に基づき、「1.5」として計算する。
- 厚さ45mm、幅90mmの木材の筋かいを「たすき掛け(ダブル)」に配置した軸組の壁倍率は、片筋かい(2.0)の2倍となるが、法令上の上限値の規定により「4.0」とする。
- 構造用合板(厚さ9mm)を、規定の釘(CN50)を用いて外周部及び中間部に100mm間隔で打ち付けた耐力壁(面材)の壁倍率は、「2.5」として計算する。
- 同一の軸組(同じ柱間)において、片側に「木材の筋かい(壁倍率2.0)」を設け、もう片側に「構造用合板(壁倍率2.5)」を併用する場合、その軸組の全体の壁倍率は、それぞれの数値を加算して「4.5」とすることができる。
- 異なる仕様の面材(構造用合板など)を軸組の両面にそれぞれ打ち付けた場合、計算上の壁倍率の合計値が「5.5」となったため、構造計算における設計用の壁倍率は上限値である「5.0」として処理した。
【正解】1
- 解説:木材の筋かい寸法と壁倍率の数値が誤っています。建築基準法施行令において、「厚さ30mm以上、幅90mm以上」の木材による片筋かいの壁倍率は【2.0】です。記述の「1.5」となるのは、さらに薄い「厚さ15mm以上、幅90mm以上」の筋かいの場合です。試験ではこの1.5(15mm)と2.0(30mm)の組み合わせが非常に激しく狙われます。
- ポイント:筋かいの壁倍率:「15mm×90mm = 1.5」、「30mm×90mm = 2.0」、「45mm×90mm = 2.0」。同じ柱間に異なる耐力壁(筋かい+合板など)を混ぜる場合、「単純に足し算(加算)」してOKですが、どれだけ頑丈に作っても構造計算上の上限値は一律「5.0」となります。

2. 耐力壁の平面配置と偏心
【問題】木造軸組工法における耐力壁の平面的な配置及び建物のねじれに関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 地震力による水平力に対して建物が平面的なねじれ振動を起こさないようにするため、各階の耐力壁は、建物の平面全般にわたってバランスよく均等に配置することが望ましい。
- 建物の各階における「重心(平面上の質量の中心)」と「剛心(耐力壁の強さの平面的な中心)」との間の距離(偏心距離)が大きくなるほど、地震時に建物はねじれやすくなる。
- 耐力壁の配置バランスを確認する指標として「偏心率」があり、構造計算(許容応力度計算)を行う場合、各階のXY方向の偏心率は、原則として「0.15以下」であることを確認しなければならない。
- 外壁の片側(例えば南面)に大開口(大きな窓)を連続して設け、反対側(北面)に耐力壁を集中させた配置とすると、剛心が北側に極端に偏るため、偏心率が大きくなり設計上不利になる。
- 建物に作用する「風圧力」は建物の見付面積(壁の投影面積)に比例するため、風圧力に対する耐力壁の配置バランスを検討するにあたっては、建物の重心ではなく「図心(見付面の中心)」を基準として偏心距離を考慮する必要はない。
【正解】5
- 解説:耐力壁のバランス検討において、「風圧力」を考えるときも偏心(ねじれ)の考慮は必須です。地震力は建物の重さに比例するため「重心と剛心」のズレをチェックしますが、風圧力は風を受ける面積に比例するため「図心(見付面積の中心)と剛心」のズレ(偏心距離)を計算し、ねじれに対して安全であることを確かめなければなりません。「考慮する必要はない」とする記述は不適当です。
- ポイント:地震に対するねじれチェック = 「重心」と「剛心」のズレ(偏心率0.15以下)。
風災害に対するねじれチェック = 「図心(見付中心)」と「剛心」のズレ。
開口部(窓)が片側に寄ると、壁のある方に「剛心(強さの中心)」が引っ張られるため、極端なアンバランス(偏心の増大)が生まれます。
3. 耐力壁の形状制限と開口部
【問題】木造軸組工法における耐力壁の形状、寸法制限及び開口部の取り扱いに関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 筋かいを配置した耐力壁として構造計算に算入するためには、その耐力壁が設置される軸組の有効な長さ(柱の芯々距離)が、原則として「600mm以上」確保されていなければならない。
- 構造用合板を張り付けた面材耐力壁において、壁面に点検口などの小さな開口部を設ける場合、その開口の大きさや周囲の補強方法に関わらず、その壁面の壁倍率は一律で「0(無効)」として処理しなければならない。
- 上下階の耐力壁の位置が平面的に一致している割合を示す「直下率」は、建物の構造的な安定性を高め、床組への局所的な負担を軽減するために、できるだけ高い数値となるよう計画することが望ましい。
- 筋かいを設けた耐力壁において、筋かいの傾斜角度が45度を著しく超えて垂直(立置)に近くなると、水平力に対する抵抗効率が低下するため、構造設計において筋かいの角度はおおむね30度〜45度程度とするのが有利である。
- 耐力壁の直上にある梁や桁などの横架材は、地震時に耐力壁から伝わる大きな水平力を負担するため、十分な断面寸法を確保するとともに、接合部が脱落しないよう金物で確実に緊結する。
【正解】 2
- 解説:構造用合板などの面材耐力壁に小さな開口(コンセントボックスや換気口、点検口など)を開ける場合、一定の寸法以下(例:開口の径が壁長さの一定割合以下)であり、かつ開口の周囲を適切な木枠や補強材でガチッと固めれば、規定の計算式に基づいて壁倍率を「低減(割り引き)」して耐力壁としてそのまま有効カウントすることができます。「一律で無効(0)にしなければならない」とする記述は不適当です。
- ポイント:耐力壁として認められる最小の長さ(有効長さ)は、筋かい・面材ともに「600mm以上」です。
面材耐力壁の小開口は、補強を行えば「低減」して有効化が可能(ただし、筋かいに穴を開けるのは絶対にNGです)。
筋かいの傾きは45度(正方形の対角線)に近いほど効率よく突っ張れるため、力学的に最も有利になります。
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