出題箇所:例年、学科III(構造)の No.9 〜 No.11 付近
出題数:1〜2問程度(ボルトと溶接で分かれる、または選択肢で混在して出題される)
・高力ボルト接合: ボルトを強力に締め付けることで、鋼板同士の間に生まれる「摩擦力」によって力を伝える「摩擦接合」が基本であることを理解しておきましょう。
・溶接接合: 鋼材を溶かして一体化させる手法であり、部材を完全に繋ぐ「突合せ(完全溶込み)溶接」と、L字型に交わる部分を繋ぐ「隅肉(すみにく)溶接」の応力の伝わり方の違いを意識する必要があります。
近年の出題傾向
- 高力ボルト接合のボルト穴の径は、ボルトの呼び径が27mm未満の場合は「呼び径+2.0mm」、27mm以上の場合は「呼び径+3.0mm」とする寸法規定(クリアランス)がよく問われています。
- 1つの継手の中で高力ボルトと溶接を併用する場合、「ボルトを先に本締めしてから溶接する」場合は耐力を足し算してよいが、「溶接を先に行ってからボルトを締める」場合はボルトの耐力を足し算してはいけない(無効になる)という施工順序のルールが頻出しています。
模擬問題と解説
1. 高力ボルト摩擦接合の力学的性質と施工配慮
【問題】鉄骨構造における高力ボルト摩擦接合に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 高力ボルト摩擦接合は、ボルトの強力な締め付け力によって生じる接合面相互の摩擦力によって応力を伝達する方式であり、応力の集中が少なく、繰り返し荷重に対しても高い疲労強度をもつ。
- 高力ボルト摩擦接合の設計において、ボルト穴の径は、ボルトの呼び径が27mm未満の場合は「呼び径+2.0mm」、27mm以上の場合は「呼び径+3.0mm」とすることを原則とする。
- 接合部の十分な摩擦力を確保するため、鋼板の接合面(摩擦面)に付着している浮き錆や油などをあらかじめ除去し、自然発生させた一様な赤錆面、またはブラスト処理等による粗面とした。
- 構造設計において高力ボルト摩擦接合の許容せん断耐力を算定するにあたり、接合面の赤錆処理またはブラスト処理による「設計用すべり係数」の数値を0.15として計算した。
- 高力ボルトを締め付ける順序は、接合部の中央部から外側(端部)に向かって締め進める計画とし、これにより鋼板の密着性を高め、部材の歪みを防止した。
【正解】2
- 解説:設計用すべり係数の数値が誤っています。高力ボルト摩擦接合において、接合面(摩擦面)を適切に赤錆処理またはブラスト処理(ザラザラにする加工)をした場合の「設計用すべり係数」は、構造設計の基準により【0.45以上】を確保しなければなりません。本肢の「0.15」という数値は、摩擦力が著しく不足して簡単にすべりを起こしてしまうため不適当です。
- ポイント:高力ボルトの穴の余裕(境界線は 27mm):27mm未満は+2.0mm、27mm以上は+3.0mm。
摩擦面(すべり係数)の基準値:赤錆やブラスト処理によって 「0.45以上」 を確保する。
締め付けの順序:部材を綺麗に密着させるため 「中央から外側へ」 向かって締める。
2. 溶接接合の形状と強度算定
【問題】鉄骨構造における溶接接合の設計及び形状に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 部材同士を完全に一体化させる「突合せ溶接(完全溶込み溶接)」において、溶接部の引張、圧縮、曲げに対する許容応力度は、一般に、母材(繋ぐ対象の鋼材)の許容応力度と同じ数値として構造計算を行う。
- 2つの部材が直交または交差する部分を繋ぐ「隅肉(すみにく)溶接」の許容せん断耐力を計算するにあたり、溶接部の有効のど厚の寸法は、設計上の「脚長」の0.7倍とした。
- 隅肉溶接の「有効長さ」を算出するにあたり、溶接の始めと終わりに生じやすい欠陥(クレーター)の影響を考慮し、実際の溶接の総長さから、隅肉溶接の脚長の2倍に相当する長さを差し引いた。
- 突合せ溶接において、溶接の開始点と終了点に発生しやすい欠陥を防止するため、部材の両端に「エンドタブ」と呼ばれる補助板を取り付けて溶接を行い、施工後にこれを除去した。
- 隅肉溶接のサイズ(脚長)を検討するにあたり、溶接される鋼板の厚さが異なる場合は、溶接熱による母材の熱影響や溶込み不良を防止するため、薄い方の鋼板の厚さを基準として脚長の下限値を決定した。
【正解】5
- 解説:溶接の脚長(サイズ)の下限値(最小寸法)の基準が逆になっています。厚みの異なる鋼板同士を溶接する場合、厚い方の鋼板は熱が周囲に逃げやすく、溶接の熱が十分に伝わらずに「溶込み不良(しっかりと溶けない欠陥)」を起こしやすくなります。そのため、溶接の最小サイズ(脚長の下限値)を決める際は、熱が逃げやすい【厚い方の鋼板の厚さ】を基準にして、十分な熱量とサイズを確保する必要があります。薄い方を基準とする記述は不適当です。
- ポイント:突合せ溶接は母材と完全に一体化するため、強さは母材と同じ(100%)として計算できます。
隅肉溶接の強さの要となる「有効のど厚」は、【脚長 ×0.7】です。
溶接の端っこの欠陥(クレーター)を防ぐために、「エンドタブ」という使い捨ての板を両脇に貼って溶接します。
3. 高力ボルトと溶接の併用継手
【問題】鉄骨構造の同じ接合箇所において、高力ボルト摩擦接合と溶接接合を併用する場合の力学的取り扱いに関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 同一の接合箇所において、高力ボルト摩擦接合と溶接接合を併用する場合、両方の接合方法がそれぞれの応力を完全に分担し合えるよう、部材の変形特性(剛性)のバランスに配慮した設計とする。
- 接合部の施工において、先に「高力ボルト」を規定のトルクで本締めして部材を密着させた後に「溶接」を行う場合、ボルトの摩擦力が既に発揮されているため、両者の許容耐力を「加算(足し算)」して全体の耐力を算定した。
- 接合部の施工において、先に「溶接」を行って部材を固定した後に「高力ボルト」を締め付ける場合、溶接による熱歪みや変形によってボルト摩擦面の密着が阻害されるため、高力ボルトの耐力を加算することはできず、原則として「溶接の耐力のみ」で設計した。
- 現場での施工誤差により、高力ボルトの摩擦面に大きな隙間(1mm以上)が生じた場合、そのまま締め付けると十分な摩擦力が得られないため、適切な厚さのフィラー(肌すき調整板)を挟んで処理した。
- 工場であらかじめ「溶接」を完了させて一体化した部材を現場へ搬入し、残りの接合を「高力ボルト摩擦接合」で行う場合、両者の施工タイミングと場所が完全に分かれているため、それぞれの許容耐力を加算して設計を行うことができる。
【正解】 1
- 解説:高力ボルトと溶接は、そもそも「変形に対する硬さ(剛性)」が全く異なります(溶接のほうが圧倒的に硬く、変形しにくい性質を持っています)。そのため、単純に「剛性のバランスに配慮して同時に負担させる」ということは不可能であり、【施工の順番(どちらを先に施工するか)】によって、耐力を足し算してよいかどうかが一律で決まるという厳格なルールがあります(その具体的なルールが選択肢2・3・5に記述されています)。したがって、選択肢1の記述は不適当です。
- ポイント:高力ボルトと溶接を混ぜて使う(併用する)場合、本試験では以下の「施工の順番」が100%狙われます。
ボルトが先 →溶接が後: 両方の強さを 「足し算(加算)してOK」(ボルトが先にがっちり掴んでいるから)。
溶接が先 →ボルトが後: ボルトの強さは 「足し算NG(無効)」。溶接の強さだけで設計する(溶接の熱で板が歪み、後からボルトを締めても隙間ができて滑ってしまうから)。
工場で溶接 →現場でボルト: 離れた場所で完全に独立して施工するため 「足し算(加算)してOK」。
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