出題箇所:例年、学科III(構造)の No.12 〜 No.14 付近
出題数:1問程度(柱脚の形式や、アンカーボルトの破壊に関する内容が単独で問われる)
・柱脚の形式ごとに、地震が来たときに「回転方向へ動く(ピン接合)」か、「ガッチリ抵抗して動かない(剛接合)」かという、構造計算上のモデル化(固定度)の違いを整理しておきましょう。
・柱脚を基礎に緊結する「アンカーボルト」は、地震の引張力に対してボルト自体がググッと伸びて変形能力(粘り強さ)を発揮する設計が基本であることを意識する必要があります。
近年の出題傾向
- 最も一般的な「露出柱脚」は、引き抜き力に対してアンカーボルトの伸びで抵抗する性質から、基本的には「ピン接合」としてモデル化しますが、ベースプレートの厚みやボルトの配置によっては一定の固定度を持たせて計算する実務内容が頻出しています。
- 基礎コンクリートの中に柱の根元を深く埋め込む「埋込み型柱脚」は、コンクリートの拘束力が非常に強いため完全に剛接合として扱い、埋込み深さは柱の径(または幅)の2倍以上とする寸法制限が重視されています。
模擬問題と解説
1. 各種柱脚形式の力学的特性と固定度
【問題】鉄骨構造における柱脚の形式及びその構造特性に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 「露出柱脚」は、ベースプレート、アンカーボルト、シアキー等で構成され、構造計算においては、原則として回転に対して自由な「ピン接合」としてモデル化して扱う。
- 「埋込み型柱脚」は、鉄骨柱の根元を基礎コンクリート内に深く埋め込む形式であり、柱脚部に十分な剛性と耐力をもたせるため、埋込み深さは原則として柱幅(または柱径)の2.0倍以上とした。
- 「外のり埋込み型(根巻き型)柱脚」は、柱の周囲に鉄筋コンクリートの根巻き部を設ける形式であり、根巻きの高さを柱幅(または柱径)の2.5倍以上確保することで、剛接合に近い高い固定度を期待することができる。
- 露出柱脚において、地震時の大きな曲げモーメントに対して部材が急激に崩壊するのを防ぐため、引張力を受けるアンカーボルトが降伏するよりも前に、基礎コンクリートがコーン状に抜け出す「割裂(脆性)破壊」が先行する設計とした。
- 露出柱脚の設計において、柱の底部から基礎へ伝達されるせん断力に対して、アンカーボルトのせん断耐力だけでなく、ベースプレート下面と基礎コンクリート(又はグラウト材)との間の摩擦力も合わせて抵抗させる計画とした。
【正解】4
- 解説:破壊が生じる順番(安全側の設計原則)が誤っています。地震時に露出柱脚へ強い引張力が作用した際、コンクリートが急激にポッキリ割れてボルトごと抜けてしまう「割裂破壊(脆性破壊)」が先に起きると、建物は一瞬で倒壊してしまい非常に危険です。そのため、安全設計の基本として、基礎コンクリートが破壊するよりも前に、アンカーボルト自体がググッと引き伸びて変形能力を発揮する「アンカーボルトの引張降伏」を先行させる設計としなければなりません。記述は逆になっているため不適当です。
- ポイント:露出柱脚は原則 「ピン接合」、埋込み型や根巻き型は 「剛接合」 として計算します。
埋込み深さは 「柱の太さの2.0倍以上」、根巻きの高さは 「柱の太さの2.5倍以上」 です。
本試験では、本肢のように「コンクリートの破壊が先行する」という、危険な設計ルートをあたかも正しいかのように書いて引っかけるのが定番です。
2. アンカーボルトの設計と施工制限
【問題】鉄骨構造の柱脚に用いられるアンカーボルトの設計及び施工制限に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 露出形式の柱脚においては、地震時にボルトが基礎から引き抜けるのを防止するため、一般に、アンカーボルトの基礎に対する定着長さをアンカーボルトの径の20倍以上とした。
- 地震時にアンカーボルトに作用する引張力に対して、ボルトのねじ部だけで急激に破断するのを防ぎ、ボルト全体に十分な伸び能力(粘り強さ)を発揮させるため、軸部とねじ部の有効断面積がほぼ同等となる「転造ねじ」のアンカーボルトを採用した。
- 柱脚部に作用する引張力によってアンカーボルトが引き抜かれるのを防ぐため、アンカーボルトの末端(コンクリートに埋め込まれる側)に、適切な形状のフックを設けるか、または定着板(アンカープレート)を固定した。
- 露出形式の柱脚におけるベースプレートの直下には、上部からの圧縮荷重を基礎コンクリートへ均一に伝達させるため、無収縮モルタル(グラウト材)を隙間なく密に充填した。
- 露出形式の柱脚は、ベースプレートの厚みやアンカーボルトの配置に関わらず、ベースプレート下面の変形が全く生じないものと仮定し、構造計算においては常に完全な「剛接合」としてモデル化して処理した。
【正解】5
- 解説:露出柱脚の構造計算上のモデル化が誤っています。露出形式の柱脚は、引き抜き力に対してアンカーボルトが伸びることで変形を許容する性質をもつため、構造計算においては原則として回転に対して自由な【ピン接合】として扱います(ベースプレートの剛性等を考慮して一定の固定度をもたせる場合でも「半剛接合」扱いです)。「常に完全な剛接合として処理した」とする記述は不適当です。
- ポイント:アンカーボルトの定着長さ = 「径の20倍以上」
切削ねじ = 削るからねじ部が細くなり、そこで一瞬で切れる(脆い)。
転造ねじ = 盛り上げるから軸とねじの太さがほぼ同じで、全体が長く伸びる(粘り強い)。
3. 柱脚部のせん断力伝達
【問題】鉄骨構造の柱脚におけるせん断力の伝達及び構造詳細に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 柱から伝わってきた地震時の水平せん断力を基礎へスムーズに逃がすため、ベースプレートの下面に「シアキー(突起)」を溶接し、これを基礎コンクリートの凹みに噛み合わせる構造とした。
- 露出柱脚のベースプレートに設けるアンカーボルト用の穴(ボルト穴)は、施工時の位置ズレを吸収するためにボルト径よりもかなり大きくあけるのが一般的であるため、そのままではせん断力をボルトに期待できず、本締め後に「座金(ワッシャー)」をベースプレートに溶接して一体化させた。
- 埋込み型柱脚のせん断力の伝達において、柱から受ける水平力は、埋め込まれた鉄骨柱の側面と基礎コンクリートとの間の「支圧(押し合う力)」によって主に伝達されるものとして設計した。
- 露出柱脚において、柱にかかる長期の圧縮荷重(建物の自重)が非常に大きい場合は、ベースプレートと基礎コンクリートとの間に生じる「摩擦力」のみで設計せん断力をすべて負担できると判断し、シアキーの設置を省略した。
- 柱脚のベースプレートの厚みを決定するにあたり、上部からの圧縮力によってプレート自体が弓なりに反り返る「曲げ変形」に対して十分な剛性をもたせるため、柱の皮膚(スキンプレート)の厚さよりも薄い鋼板を採用した。
【正解】 5
- 解説:ベースプレート(柱の底に敷く分厚い鉄板)の厚みのバランスが不自然であり、力学的に誤っています。ベースプレートには、上からの圧倒的な重さや、地震時の引き抜き力がアンカーボルトを通じて強烈に作用します。このプレートがペラペラだと、ボルトに引っ張られて簡単にグニャリと曲がってしまい、力を均一に基礎へ伝えられません。そのため、ベースプレートの厚みは、原則として【柱の板厚よりも厚いもの(一般には16mm〜40mm以上の分厚い鋼板)】を使用しなければなりません。「薄い鋼板を採用した」とする計画は、剛性不足になるため不適当です。
- ポイント:ベースプレートはめちゃくちゃ「厚い」鉄板を使います(柱の板厚なんかよりもずっと厚いです)。
露出柱脚のボルト穴は位置調整用に「ガバガバに大きく」あいているため、そのままでは横揺れ(せん断力)をボルトに伝えることができません。そのため、「分厚い座金を上からセットして、プレートごと溶接で固定する」という実務処理を行います。
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